拓弥「さて『第二十一話』」
梅幸「第二十一話」
拓弥「『三つ子の魂』ですが」
稲穂「『三つ子の魂』って名前をつけたのは私なんですけど」
拓弥「いつ頃つけたの、それは?」
梅幸「エチュード終わった直後だよね」
稲穂「そうそう」
梅幸「なにがいい? って言われて」
稲穂「あれは感動的なエチュードでしたよね。」
拓弥「最初はどんな感じにしようと思ったの? 決まってたのは二人でやるってこと?」
梅幸「妊婦やりたいって言ってたんだけど、その時は却下されて。未知ちゃんは子供ができたら、絶対に堕ろすとか言わないから、ドラマにならないと思うって言われて」
拓弥「ああ・・」
梅幸「真由実ちゃんは心理学の勉強をしていると、それで、未知ちゃんが破綻している方がいいって言われて・・」
拓弥「それで、その破綻はどんなものがいいのかって話をしたんだ、二人で」
梅幸「そうそう・・それで二股かけていてって話になったんだよ」
拓弥「それで現場を押さえられる」
梅幸「でも、つきあってはいないから、問題はないんだけど、どっちともつきあってはいない。別れた彼とまだ同棲していて、そこに男を連れ込んだら、その別れた同棲中の男が帰ってくる。たまたまね」
拓弥「気まずい状態になる」
梅幸「それで真由実ちゃんところに逃げてくる」
拓弥「なんで、それで逃げてこなきゃなんないの?」
梅幸「いや、きまずいから・・帰れないって」
稲穂「なんでその話になったのかな?」
梅幸「それ、覚えていないんだよね」
稲穂「なんで男の話になったんだろう?」
拓弥「なんかずっと稽古場の別室でくっちゃべってたよね」
稲穂「そうそう」
梅幸「それでたまに、じんのさんが小部屋にやってきて、ちょこちょこっと軌道修正してくれて」
拓弥「でも、ほぼ、エチュードでやったものが採用されてたよね」
稲穂「もう勢いでやってたから、脈絡があって、ないんだよね」
梅幸「そうそうそう・・」
稲穂「実際、脚本になってみたら、覚えるのは大変だった。覚えるのは大変だったけど、エチュードの感覚が残ってたから、楽だったけどね、本番は」
拓弥「この辺から、二人が稽古してるのか、くっちゃべってるのかわからなくなってきたんだよね。普通に僕らが話しかけちゃうんだよね。稽古中に。梅ちゃんは相手としてどうでしたか?」
稲穂「そこで一緒に組むことになった梅田幸子さんとは、それまで一回しか会っていないんですよね。この人がどんな人かはまったく知らない状態でしたからね。そっからスタートしたのに、まったく自然に入っていけましたからねえ。最初は未知ちゃんの男関係を延々と話していて、その後に、昔、どんな二人だったんだろう、なんて話をしたんですけど、梅ちゃんの昔ってのが、すごくリアルに想像できるんですよね。それもじんの先生がいろいろ軌道修正しながらだったんですけどね」
梅幸「ほっとくと逸れていっちゃうからね」
拓弥「じんの先生あっての『三つ子の魂』ですからね。って入れとかないと。梅ちゃん側はどうでしたか、ほいなーは」
梅幸「出会って、すぐだったからねえ。とりあえず未知と真由実ちゃんは同じ年っていう設定だからねえ。ほんとは五歳くらい違うんですけどね」
稲穂「ほんとはね」
梅幸「普段、プライベートで会うことはないけどね」
稲穂「会わなくても平気なくらい、って言っとこうよ」
拓弥「ものは言いようの典型だね」
梅幸「でも、ほんとにね、幼なじみといる感じ」
稲穂「そうそう、役柄上の関係と実際の関係が、近くなったよね」
梅幸「無理なくそうなったって感じ」
拓弥「相性がいいんだね」
梅幸「ああ、そうだね」
稲穂「たぶん、そうなんだろうね」